お前、やっとるやん
たっちゃんの親リーが入った。
捨て牌からして手なりの早仕掛け。
たっちゃんらしいや。
でも彼は剛運だから怖いんだよ。ニコニコ裏裏なんでザラにある。
僕はゴミ手だったからすぐにベタ降り。
下家のコウさんも追随して降りた。ただ、対面の佐藤だけはゴリゴリに押していた。無スジ、脂ギトギトのところをポンポンと。
なんかやっとるなって雰囲気が場に漂うと、佐藤はこれ見よがしにタバコに火をつけた。
いわゆる、テンパイのサイン。彼はテンパイしてヒリつくとタバコを吸い始める。
佐藤の捨て牌からして筒子の染め手で間違いなかった。
親のたっちゃんはいよいよ焦りだす。
「だーもう!マジでひけへん」
そう言いつつ空降ったツモを強打する。
そして終盤へと進み、たっちゃんも筒子待ちであることが見えてくる。
コウさんが言う。
「やべえ張っちまった!ただ、これ切ったらどっちかに振るんだよなあ。」
たっちゃんがコウさんに聞く。
「ちなみに何と何で悩んでるんすか?」
「西と七萬」
「ウソばっかり笑」
それはついさっきどちらも通っていた牌だった。
佐藤が割って入る。
「コウさん、俺に振れば安いよ」
「マジ?でもお前染五郎じゃん」
「大丈夫、大丈夫」
「まあ、親のスケベに刺さるよりましか」
コウさんはたっちゃんの現物、二筒を切った。
一瞬、佐藤は自身の手牌を触り沈黙。え、当たったの?それとも鳴くの?という雰囲気が場に流れ
「とうしや!」
と、佐藤は二筒をスルーした。
そして海底を僕が切り結局誰も上がれずに場は流れた。
たっちゃん、佐藤、コウさんがテンパイで各々手牌を倒した。
「あ!お前、やっとるやん!」
その刹那、コウさんが声をあげた。
それは、佐藤に対してだった。
佐藤の手牌は
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スッタン夢見るみちる。
染五郎に見せかけての一索単騎。
引っ張ってきたら誰もがノータイムで落としていたであろう、たっちゃんがずっと前に切っていた現物。
やっとる。
あの二筒の小芝居はなんだったんだ。
その想いは皆いっしょだった。
コウさんがまくし立てる。
「もう怒ったわ。これからオープンリーチしかせんから」
そう言い放ち、始まった次局。
コウさんは嬉しそうに、普通にダブリーをかけた。
終