僕は、五(ぐ)に張った。

思った事を書いてるだけ

酒が進んだ夜に

夜中、家で飲んでいた。

たまには女でも買うかと思った。

今思い返してみても、なぜそう思ったのか理解できない。ゼニに余裕はなかった。それに僕は呪いを抱えている。向いてないんだよ。そんな直線的なエロなど秒でポンだ。

おそらく、酒の力だろう。普段飲み慣れないワインに当たったと思われる。

ググって適当に安そうなお店を選んだ。

電話に出たのは眠そうな片言の姐マダム。

もちろん、自宅へと呼んだ。料金はトータル13000。つまりヒサンだ。実際、その相場なんてよくわからない。しかし、まあ普段凸してるアジエスとかと比較すればそれなりリーズナブルな気がした。

住所をショートメッセージで送る。そしてその30分後くらいに店から電話が掛かってきた。

場所がわからないと。

すでに住所は送っていたのだからこれ以上説明のしようがなかった。近くに○○がある、今どこにいるのか?何が見えるか?そんなやりとりをして電話を切りさらに30分が経過。

痺れを切らし僕の方から電話をする。そうすれば、

「ドライバー怒って帰っちゃった」との事。

いや、そんな事あるんかいとは思ったもののマダム姐はすでに違う子を派遣したと自信満々に捲し立ててくる。

なかなかできるじゃないか。

「あと10分でつくよ!」

そう言われ電話を切った。

そして、インターホンが鳴る。

僕は立ち上がりふらふらしながら玄関へと向かった。扉を開ければ、これぞまさしくアジアン姐がそこに立っていた。どうぞどうぞと中へ案内し、居間のソファーに腰を下ろした。

彼女は僕の宴の様子を見て「おにいちゃん、けっこう飲んでるねえ」と驚いた風に言った。

「よかったら、キミも飲むかい?」

「ああ、ありがとう」

冷蔵庫から、いつかのレモンチューハイとハイボールを出してどっちがいいか聞いた。彼女はちょっと悩んでレモンチューハイを選んだ。

ソファーに座り、乾杯。

あ、そういえば料金払ってない。「お姉さん、おいくら万円やったっけ?」「13000よ」もちろん把握している。だからこそすでに僕のポッケに畳んであったヒサンを彼女へ渡した。

テレビで垂れ流していたアウトレイジがいよいよ佳境に入る。姐は怖いと目を伏せた。僕は無言でテレビを消した。

そういえば、キミの名前は?

マイ。

良い、名前だね

あなたは?

ーーーきっぺい。

それはまさしく、さっきまで観ていたアウトレイジの影響を受けた名前だった。彼女は僕の事を「きぺいさん」と呼んだ。

僕達はソファーで肩を寄せ会いタブレットでYouTubeを観た。彼女のおすすめの中華アーティスト、僕が唯一知っている我不後悔、スタミナはビビアン・スー、それらを眺め酒を飲みながら楽しい時を過ごした。

ーーーきぺいさん、子どもいる?

今はいないよ

それを皮切りに彼女は自身の人生について語ってくれた。僕はその話を聞いていると、目頭が熱くなった。間違いなく、彼女は苦労していた。家族の為、身体を売ってゼニを稼ぐその姿になんだか切なくなった。

それでも、彼女は微笑んでいた。

ちらりと時計を見た。

彼女がここに来てからすでに40分が経っていた。

彼女との契約、それは1時間。今は寄り添いにこやかに微笑んでくれているが、あと20分ほどで彼女はいつもの彼女に戻り、お城へと帰っていく。

魔法が解けないうちに、スッキリはしておきたい。

和やかなムードは、僕の「じゃあそろそろ頼むわ」で終焉を迎える。彼女はレモンチューハイをキュッと飲み干し「オーケー」と言った。

そして、それは流れのままに執り行われた。

ソファーの上、タブレットから垂れ流されるよくわからない中華POP、彼女のカバンから出てきたウェッティなティッシュで拭かれ、一気に。

仕上がりに仕上がった頃、彼女は囁く。

「一万でもっと気持ちいい」

本来なら、それは悪しき呪文である。しかし、彼女がそれを言うと、どうも重みがあった。なにせ、彼女は子どものミルク代をおじいさんのお粥代を稼がなければならない。

だからこそ、ここは気持ちよく出してあげたいし、なんなら僕も気持ちよく出したい。

「ちょっと待ってて」

僕はビンビンを左右に振りながら自室へと向かった。財布からゼニを取りだそうとするも、そこには漱石が5人のみ。

ごめん…

そう言いつつ彼女の元へと戻った。

すると、彼女は言った。

「今日は5000円でいいよ」

「ありがとう」

そして、その営みはわずか数秒で終わり僕達は服を着てソファーに腰を下ろした。彼女はレモンチューハイの缶を持ち上げると、それが空だと気付きテーブルの上に置いた。

よかったら、もう一本飲む?と聞けば、もう時間だからと彼女は首を横に振った。

最後にLINEを交換した。
彼女のアイコンはお子さんの写真だった。

「可愛いね」

「ありがとう」

彼女は微笑みながらそう言った。しかし、なぜか僕の心は妙に切なかった。その理由はよくわからない。

彼女を玄関まで見送り、また酒を飲んだ。

テーブルの上に咲くティッシュの花。そこには僕の不摂生が包まれている。

深いため息が出た。


以上